私にとってキーボードの歴史はそのまま私が使ってきた PC の歴史です. はじめは大学の研究室にあった NEC PC-8001. 次は個人で初めて買った NEC PC-8801 シリーズ. そして同時期に研究室にやってきた NEC PC-9801 と最初は NEC ばかりで, キーボードもほとんど同じ配列でした. その頃はキー入力と言っても半分はゲームのテンキー入力で, キー配列へのこだわりはありませんでした.
社会人となってからもしばらくは NEC の天下でしたが, 仕事がハード開発から ソフト開発へ少しずつ変化するに従い, 環境も変化して行きました. まずは CD-ROM 応用開発を行うようになり IBM PC AT を使いました. この時が最初のキー配列ショックです. 基本的な文字の配置は同じなのですが, コロン(:)やセミコロン(;), アスタリスク(*)やイコール(=), チルダ(~)やアンダースコア(_)など記号の配置が大きく異なります. しかも丁度 C 言語を使い始めた頃で, 記号入力の機会が以前より格段に増えました. 元はと言えば PC は米国のものでアルファベット 27(26)文字 + 記号の入力が 目的のものに, かな 50(46)音の入力のため, 記号の配置を無理矢理変えて(工夫して?) 押し込んだのが原因なのですが(?? 真偽の程は不明ですが, 私はそう考えています), なまじ NEC 配列に慣れていたために, IBM 配列を恨みました.
IBM PC に慣れたころ次の変革がやってきました. 会社での UNIX マシンの導入です. 当時 UNIX 専用機は PC とは区別してワークステーションと呼ばれていました. メインマシンは Sun の Sun-3, Sun-4, SPARCstation. 時折チルダ(~)/バッククォート(`)を探すことがありましたが, 基本は慣れてきた IBM 配列でした. サブとして使った X 端末も同様です. 途中, SONY の NEWS が加わりましたがこれも ~/` 以外問題なしです.
会社で UNIX の面白さを知り, 個人でも UNIX で遊びたいと言う欲求がでてきました. まずは UNIX 関係のことを色々教えてくれた友人の影響で SHARP X68000 を購入し, Emacs や TeX など UNIX で使っていたツールの移植版を動かしては喜んでいました. X68000 のキーボードは大きめでキー数が増えていますが, 基本 NEC 配列と同じです.
そうこうするうち世間では AT 互換機上で UNIX を動かす PC-UNIX のニュースが流れるようになりました. もうこれは試すしかありません. PC-UNIX を動かすための環境を念入りに調べて部品を集め, AT 互換機 を組み, FreeBSD を中心に UNIX の世界を楽しんでいました.
この AT 互換機で遊ぶようになってから, キーボードに対する考え方も変わりました. 以前はシステムとキーボードは一体で, PC に標準で付属するキーボードを 使う以外の選択肢はありませんでした. まれにキータッチが気に入らなくて 同じメーカーの古いキーボードに変えたりすることはあっても, キー配列は与えられたものにこちらが慣れるしかありませんでした. ところが PC 互換機になり, キーボードも好きなものを選べるようになったのです.
最初に AT 互換機で使っていたのは US 101 キーボードです. 最初のうちは, PC-UNIX の日本語環境も整っておらず, 開発の盛んな米国本国と 同じデバイスの方が問題も起きず使いやすかったのです.
PC-UNIX の初めの頃は DOS/V とのデュアルブートでした. その頃は DOS/V の利用頻度は多くなく, 日本語入力時に多少の使いづらさは あったものの, 英語キーボードで十分でした. その後 Windows95 が出現すると 少しづつ PC-UNIX の頻度が減り, Windows 中心にネットアクセスで遊ぶ事が 多くなりました. 当然国産アプリを使う機会が増え, 日本語キーボードが 要求される機会が増えました. この時に主役となったのが AX キーボード です. キー配列は NEWS キーボードと同じく IBM 101 に近いものになっています.
Windows XP が出た頃には, 私にとっての PC-UNIX ブームは終わり, Windows しか使わなくなってしまいました. 仕事の方も変わってしまいワークステーションを使わなくなりました. キーボードの方も JP 106 キーボード, JP 109 キーボード と変遷しています.
最近小型キーボードに凝っています. きっかけは会社から新しく供与された ノート PC(Dell Vostro 3591)のキーボードです. 入力をしていくと改行したつもりが '4' が入力されることがしばしば. 改めてキーボードを見ると Enter キーが小さめです. 更にタッチパネルエリアが大きいため, 大きなパームレストが付いている事になり 腕を伸ばして入力せざるを得ない状況です. 私は普段キーボードを一番体に近くなるよう机の端に置き, 掌よりも肘を下げて タイピングしています. このため腕を伸ばしたタイピングは普段と違った体勢です. これらのために時々 Enter キーの隣の 4 キーを押してしまうようです.
それに慣れればよいだけの話なのですが, 歳をとって新しいものへの対応に 時間がかかるようになっている事と, 家ではミニキーボード(HHKB Lite2)を 使っており 2 種類の環境があるため余計に慣れづらい事が重なり, うまく対応できません. そのためキーボードを買うことにしました(2020/10).
家で使っている HHKB Lite2 を買おうとしたところ, 2019 年末で販売終了に なっていました. 「何か他のものを見つけないと.」 ここからキーボード探しが始まりました. 求めるキーボードの条件は以下の 3 点です.
当然 HHKB Professional は候補の一つですが, 2 万円を超えます. 価格の点で許容範囲外です. せめて 1.5 万円程度なら... 多数の機種が販売中止になっていて, 在庫品の価格がつり上がっているのも 痛いところです.
検索で引っかかってきたのは以下の 2 つ. 取り敢えず安い方を買って試して 見ることにしました. (安物買いの銭失いパターンかも知れませんが, 貧乏性は簡単には変わりません.)
と言うことでサンワサプライのミニキーボード使ってみました. (現在も使っています.) 悪くありません. ミスタイプも確実に減りました. 惜しむらくはファンクションキー. 私はテンキーだけでなくファンクションキーもほとんど使いません. このキーボード, Enter キーの右に何もないのは素晴らしいのですが, どうせなら上段のファンクションキーも取っ払って欲しかった. そうすれば更にコンパクトになったはずです. 後, カーソルキー. HHKB ではカーソルキーが他のキーより明確に低くなっており, 押し間違いは殆どありません. このキーボードでは他のキーと同じ同じ高さ/大きさで, 区別が付きづらく なっています. キーの感触はメンブレン特有のものです. 使っている HHKB Lite2 も同じ メンブレンなので問題なしです.
このように書きながら矛盾しているのですが, 結局 ARCHISS のミニキーボードも 買ってしまいました. 「会社と家にそれぞれ置いておけば PC 本体だけの持ち運びで済む」と 勝手な理由をつけて, PC 電源, マウスとともに購入しました. この機種は DIP SW 設定で一部のキーの入れ替えが出来るようになっています. キーの入れ替えは Change Key (v1.50) と言うレジストリ書き換えソフトを使って いるのであまり重要ではありませんが, 入れ替えに合わせたキートップも 用意されておりカッコイイ! 好感触です. またメカニカルキーのため, 打鍵感がイイ. (私の買ったのは赤軸です.) 惜しむらくは右端に置かれた Ins と Del の 2 つのファンクションキー. 要りません. まだ慣れていないせいか時々 BackSpace キーのつもりで Ins キーを 押してしまいます. 要らないどころか邪魔です.
しばらく会社で使っていたのですが, キー入力のカチャカチャ音が結構うるさく 気になります. 打鍵感が好きになりつつあったのに... ああだこうだ言いながら, 結局静音赤軸品を買ってしまいました(2020/10/24). 今は会社で静音赤軸, 家で赤軸を利用中です. PFU の Happy Hacking Keyboard も SANWA のミニキーボードもそれぞれ 別のマシンで使っています. これで私のマシンのキーボードは全て ミニキーボードとなりました.
最後に私のミニキーボードの大きさが比較できる様に写真を載せておきます. 上から順に HHKB, SANWA, RETRO TINY です. どれもお薦めです.