カセットテープのデジタル化です. ビデオのデジタル化は途中で止まっているのに... オーディオも同じように途中で飽きちゃうかも知れませんが, それはそれで良し として.
昔, レンタルレコード(CD じゃありません, レコードです)を借りまくって
カセットテープに録音してました. そんなこんなでいつの間にか 1000 本近く
溜ってました. 1980 年代はカーステレオもカセットが主役で, それらを
良く聞いていたのですが, いつの間にか CD の時代になり, カセットは
追いやられてしまいました.
追いやられるのも「押入れの片隅に」って言うのなら可愛いのですが,
1000 本となるとさすがに場所を取ります. 気に入っていたアルバムは
CD を入手してカセットを捨てる様に心掛け, 相当量処分したのですが,
中には「CD 化されないもの」や「CD を買う程ではないけれど捨てるには
惜しいもの」があり, まだ 200 本近く残ってます. これらを全て MP3 化して
テープは捨てて身綺麗にするのが目標です.
残ったカセットです. 段ボール箱にギッシリ. 一箱に 90 本ぐらい. この箱がまだ 2 箱と少しあります.
何かカセットを見ているだけで(聴かなくても)懐かしさがこみ上げて来ます.
親に買ってもらったラジカセ. 貯金を叩いて買った(コンポ型)ステレオ.
エアチェック(FM 番組の録音をこう呼んでいました)に注いだ情熱. 友達との
レコードの貸し借り. レンタルレコード店への往復. ドライブ中のカセット
入れ換え. 数え上げればキリが無い... あまりに懐かしいので, 残っていた
テープの中から思い出深いモデルの写真を. (基本的に, 貧乏なので
高級テープはほとんどありません :-)
[SONY]
C60,
C90,
CHF90,
BHF 90,
HF-S 46,
CDixII 40,
[TDK]
D C60,
SA C45,
SD C45, AD C60,
AD 46
(case 裏面, 表面の商品名が無くなる),
AD 46 (第二世代)
(case 裏面, 表面はインデックスに),
AD 50 (第三世代),
(消磁カセット),
[maxell]
LN C60, UL 60,
UD 90,
UDI 46,
UDII 46,
UR 46,
(クリーニングテープ),
[Scotch]
Scotch CRYSTAL 90 (第一, 第二世代),
[DENON]
DENON DX3 42,
DENON DX3 42 (第二世代),
DENON DX3 42 (第三世代),
DENON DX4 90,
[FUJI]
FUJI (Range)-2 C90,
AXIA PS-Is 50,
[That's]
That's EM 46
さて, まずは MP3 化のための機材を揃えなくてはなりません. 昔使っていたカセットデッキはとっくに処分しています. 気が付いたらカセットデッキだけでなくラジカセ, ウォークマン, 身の回りにカセットテープの再生環境が全くありません. しょうがないので, 購入することにしました. ネットでチェックすると現在カセットデッキを出しているのは TEAC のみ. 価格は 3 万円前後. さらに f 特は 14kHz... あれっ, 昔のデッキは 20kHz 近くまで行ってなかったっけ... 残ったテープを再生するだけなのに 余りお金は掛けたくない. では, とラジカセを見てみると細々と製品は出ているものの, オモチャみたいな ものばかり. 価格は 5 千円程度から. f 特なんて 12kHz あれば良い方. 最新の製品に至っては f 特の記述が削られている. 出力もヘッドフォン出力しか 無いし. これでは余りにも悲しい.
結局, オークションで中古のカセットデッキを入手することにしました. 条件は,
競り落したのは PIONEER の T-555WR と言うダブルデッキ. 2 ヘッドです. リモコンが欠品していたために価格は 1,500 円. 送料 1,000 円で合計 2,500 円で入手できました. 実際のモノは, EJECT メカの効きが悪い 程度で, 無事テープ再生できました. そうそう f 特は 18kHz. 納得の 値です. PIONEER は昔使っていたデッキ 2 台(CT-9, CT-910)がどちらも 故障がちで良い印象が無く, どちらかと言えば避けたかったのですが, 価格優先です. 文句は言えません.
このデッキを PC に繋いで早速作業を始めたのですが, 現状の私の システムでは録音中の音を聴くにはデッキのヘッドフォン出力を 使うしかありませんでした. 私は通常 PC の音はヘッドフォンで 聴いているのですが, 録音のときは子のヘッドフォンをデッキに接続して 使い出しました. しかし, 「録音した音を PC で確認のため再生」なんて 作業を始めると, ヘッドフォンの抜き差しを繰り返す事になり とても面倒です. 結局 PC 用スピーカを購入してしまいました. Creative 社の Inspire T10 (IN-T10) と言う製品で 3,000 円. デッキよりも高い買物になってしまいました.
以上により以下の様なシステムを構築しました.
品名 | 型番 | 費用 |
---|---|---|
Cassette Deck | Pioneer T-555WR | 2,500 |
PC Speaker | CREATIVE IN-T10 | 2,980 |
Audio Plug (mini to 6.5mm) | (不明) | (既存) |
Audio Plug (RCA x 2 to mini) | (不明) | (既存) |
Headphones | Pioneer SE-M290 | 1,418 |
PC (Motherboard) | ASRock Z87M Pro4 | 8,898 |
残念(その 1)
実はシステムを運用し始めてまもなく PC のサウンド設定 (コントロールパネル → 「サウンド」→「再生」タブ から, 「スピーカー」→「レベル」タブを選択すると, 「Front」「Rear」「Center」等のスピーカー選択の他に 「マイク」や「ライン入力」と言う項目があるのを見見つけました. 「再生」設定で「ライン入力」? デフォルトではレベルが 0 に なっていました. もしやと思ってレベルを上げるとライン入力からの 音がモニタできるではないですか! スピーカー買わなくても 良かったかも知れない...
機材が揃ったら, PC 側のソフトウェアの準備です. 使えるソフトは 色々あると思いますが, 現在私が Windows 10 の環境で利用しているのは 以下のモノです. このうち SuperTagEditor 改 Plugin Version (STEP) と iTunes は MP3 ファイルを, 私が所有する iPod で聴くために利用している モノなので, 他のデバイスを使ったり, PC 上だけで聴く方には必要ありません.
ソフト名 | バージョン | 用途 |
---|---|---|
SoundEngine Free | 5.2.1 | WAV 録音(LINE 入力 => WAV ファイル), WAV 編集(曲分割) |
Audacity | 2.1.1 | WAV 編集(ノイズ除去) |
午後のこ〜だ | 3.13a | MP3 変換(WAV ファイル => MP3) |
SuperTagEditor 改 Plugin Version | 1.03 | MP3 タグ編集 |
iTunes | 12.1.2 | MP3 曲管理 |
まずは録音ソフト, 色々ありますが私は SoundEngine Free を使っています. Audacity も録音機能を持っていますが, 録音レベルメータの見やすさから 選んでいます. 時にピーク値が数字で表記されるのは嬉しい. いつもこれを 頼りに録音レベルを決めています.
ここで録音レベルの話を. テープ録音をして困ったことは, テープにより 録音のレベル(音の大きさ, 音量)がまちまちであること. さらには左チャンネルと 右チャンネルの音量が異なっているのも多いこと. 左右のレベルは揃っている ものの方が少ないぐらいです. 左右の音量の大きい方に合わせて録音して, 後でデジタル加工してもう片方の音量を上げても良いのですが, 妙にこだわっています. 左右差があると言っても 6dB 違うことはほとんど無いので, 後補正でも高々 2 倍拡大なのですが...
録音レベルの設定にはレベルメータを活用します. 上図は録音中の画面です. 画面の右側がレベルメータで, カラフルな緑, 黄, 赤のバーの上方に数字が 表示されています. これがピーク値です. 上図では左 -1.3, 右 -1.0 と なっています. レベルメータ内で右クリックしリセットを選べばピーク値はリセットされます. リセットされない限り最大値をずっと保持します(ピークホールド).
私はまず録音レベル設定を低めに設定し, その設定でカセットの片面につき それぞれ前半と後半の 2 つのピーク値を取り, その値を参考に PC 側の 録音レベル設定を決めています. この録音レベル設定の為, カセットを 2 回 聴くことになります. 1 回目はピーク値チェック. 2 回目は本録音. 尚, 1 回目のピーク値チェック時は録音モードにするだけで, 実際の録音は 開始させていません. レベルメータさえ動けば良いので.
PC 側の録音レベル設定は SoundEngine の「ツール(L)」→ 「録音ボリュームコントロール(R)」で PC の「サウンド画面」を開き (コントロールパネル → 「サウンド」でも可), その「録音」タブ から, 「ライン入力」→「レベル」タブ →「バランス(B)」で 左右それぞれ設定しています. 値は 0 ~ 100 で, 0 はミュート(無音), 100 が最大音量です.
実際にこれで操作していて問題にぶつかりました. 「あれ, 思ったように 録音レベルが変化しない」 どうもレベル値を変えても録音レベルが 変わらないことがあるようです. 88 → 89 に変えると録音レベルが 上がるが 89 → 90 に変えても録音レベルは変わらない... 仕方が無いので, テープの同じ部分を再生し, レベル値を 1 づつ変化させて, 実際の録音音量の変化を調べました. その結果が下のグラフです.
結果から見ると, 現在の私のマザーボード(その中のオーディオチップ?)では, 録音レベルは 1dB 単位でしか制御できませんでした. さらに入力レベル値を いくつ変化させると何 dB 変化するかが線形でさえありません. 細かく変化する 範囲と, 変化が少ない範囲と... 仕方なく, レベル設定テーブルを作り, そのテーブルから値を選ぶことにしました.
その後別の PC で同じような問題に出会いました. 調べてみると全体のレベルカーブは同じようですが, 設定刻みが異なっていました. そちらの録音レベルは 0.75dB 単位の変化です. どちらも Realtek のオーディオチップを使っていますが, 型番が違います. 上のテーブルは ALC892, 新たに調べたものは ALC1150 です. 文末に ALC1150 の特性グラフを載せておきます.
録音レベル(dB) | 0 | -1 | -2 | -3 | -4 | -5 | -6 | -7 | -8 | -9 | -10 | -11 | -12 | -13 | -14 | -15 |
PC 設定(0 ~ 100) | 100 | 96 | 93 | 90 | 87 | 84 | 80 | 76 | 72 | 67 | 62 | 57 | 52 | 47 | 42 | 37 |
例えばレベル 80 でピークチェックして, 左 -2.7dB, 右 -1.4dB だった場合, 左を 2dB, 右を 1dB 上げてレベルを左右それぞれ 87, 84 で録音しても 入力オーバーしません. このレベル設定で録音すればピークは 左 -0.7dB, 右 -0.4dB となるでしょう. このように入力オーバーしないで 最大のレベルになるように録音レベルを調整しています.
実際には計算上 +0.1dB になってしまう場合も 0.0dB に収まっていることが 多いです. 最大信号に微妙にリミットが掛かってしまうのは, このオーディオチップの特性でしょう. また, ピーク信号は多くの場合 信号としてほんの 1 点で, その信号にリミットが掛かりチョッピリ小さく なっても何の問題もありません. こんなこともありピークが, -0.8db, -0.9dB 程度であれば, 実際には 1dB 上げてしまったりしています.
録音時にはスタメンから外れていますが, 細かい WAV 波形編集には Audacity を 使っています. 特にレコードの傷などによる周期的なプチップチッと言うノイズ, これが気になる音源には必須です. このプチッノイズを消すには... 私は気になるプチッ部分があると, そこの波形を最大に拡大し, 直接音データを 変更してしまいます(マニュアル補正). Audacity に標準で搭載している高性能なノイズフィルタによる自動補正も使えますが, ノイズでない本来の音にも少なからずフィルタの影響が出てしまいます. このため マニュアル補正しています. 但し, マニュアル補正は手間が掛かります. プチッは周期的に現れるので, 同じような作業を何回も繰り返す必要があり, とても面倒です. でも, この作業が楽しいところでもあります.
あ, 肝心なことを書き忘れていました. プチッノイズが気にならない音源は Audacity を使わず SoundEngine から直接午後のこ〜だへ渡しています. テープに付き物のサーと言うノイズは気にしないことにしています.
残念(その 2)
まずは黙々とテープの録音をしていました. WAV ファイルにしておけば, 曲毎のカットや MP3 への変換は好きなときにできるので. ところが, 作業中に嫌なことに気付いてしまいました. 「何かテープ遅くない?」 LP レコードを録音したカセットの中には, インデックスラベルに 曲名だけでなく演奏時間も書いてあるものがあります. ここに書かれている時間とのずれが大きいのです. カセット録音をしていた 当時からデッキによって多少テープスピードが違う事は分かっていましたが, 大きく違っても 90 分テープの片面 45 分でデッキの差が 1 分以内. 46/45 として 2% の差. でも今回の違いはそれどころでは無い感じです. 計ってみると, ダブルデッキの DECK I と DECK II とでも違います. 試しに持っている CD の曲と, テープ再生の時間を比べてみたら...
再生機器 | 演奏時間 | 比率 |
---|---|---|
CD | 3:33.379 | x1.000 (リファレンス) |
DECK I | 3:45.477 | x1.057 |
DECK II | 3:43.029 | x1.045 |
3 分半の曲で 10 秒以上遅い. やはり 6% 近く違ってる. デッキが古いのでモーターベルトが延びてしまっているのでしょうか? もう少し奮発してダイレクトドライブのデッキを買っておけば良かったのかな. 実は, この問題を細かく調べたのは, 既に 100 本以上のテープを録音した後. いまさらデッキを分解してモータ周りをチェックする気にもなれません. 録音の際に, DECK I/II どちらを使ったかのデータを残しておいたのが せめてもの救いです. いくつかのテープ/曲で時間を調べて, DECK I/II それぞれ どれだけ補正すれば良いかを決めることにしました. その値を使って Audacity の「スピードの変更(Change Speed)」エフェクトで補正して 良しとしましょう. (Audacity の他に NRS - nao's resampler と言う ソフトもあります. これも性能比較しないと...)
MP3 エンコーダも幾つかありますが, 私は CD の取り込みの時代から 「午後のこ〜だ」にお世話になっており, エンコーダを統一させると言う 観点からこれを採用しました. Audacity と組み合わせるのなら LAME も ありだと思います. 作業としてはエンコード設定をしておけば, 後は立ち上げた GUI に WAV ファイルを落として変換を実行するだけ.
ちなみに CD の取り込みは「CD2WAV32」と「午後のこ〜だ」でやってます.
おまけとして別オーディオチップ ALC1150 のレベル情報を書き出しておきます.
録音レベル(dB) | 0 | -0.75 | -1.5 | -2.25 | -3 | -3.75 | -4.5 | -5.25 | -6 | -6.75 | -7.5 | -8.25 | -9 | -9.75 | -10.5 | -11.25 | -12 | -12.75 | -13.5 | -14.25 | -15 |
PC 設定(0 ~ 100) | 100 | 98 | 96 | 93 | 91 | 89 | 86 | 84 | 81 | 78 | 75 | 72 | 69 | 65 | 62 | 58 | 54 | 50 | 46 | 43 | 39 |
さらにおまけとして REALTEK のデータシートより ALC892, ALC1150 の特性を示す. AD 性能が 14dB も違う. bit 数にして 2bit 強. ALC1150 搭載の PC で録音をやり直したくなってきた... (CD で D レンジ 96dB, カセットの場合は大きく落ちるので 90dB あれば 十分としておきましょう)
ALC892 | ALC1150 | |
---|---|---|
DAC SNR (Differential) [dB] | - | 115 |
DAC SNR (Single-End) [dB] | 97 | 110 |
ADC SNR [dB] | 90 | 104 |
volume control [dB/step] | 1.0 | 0.75 |